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金継ぎ備忘録 −割れを継ぐ①


現在取り掛かっているお直しの紹介を。善光寺近くの古道具屋さんから譲っていただいた器の割れを継いでいるところです。割れのパーツは2つ。

割れたパーツは麦漆(むぎうるし)を使って接着していきます。

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【麦漆とは】水で練った小麦粉と漆を混ぜたもの。

【麦漆の作り方】小麦粉を少量の水で耳たぶくらいの固さになるまで練る。練った小麦粉と同量の生漆を混ぜ、さらによく練る。チューイングガムくらいの粘りが出れば完成。※小麦粉に加える水は、スポイトを使って少しずつ落とすと失敗しません。

小麦粉のみを練ったところです。白玉を作る感覚で!

生漆を加えて練っているところ。

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割れた部分にこの麦漆を薄く均等に塗り、元の部分に合わせていきます。

欠片どうしを合わせていると、接合部分から余分な麦漆がはみ出してきます。ヘラなどで取りのぞきながら、ぴったり合わさるまで調節していきます。(竹串の先を斜めにカットしたもの※を使うと、細かいところも作業しやすいです)根気がいりますが、やり直しは難しいので、丁寧に。

調整していると、どうしても麦漆で欠損部分のまわりが汚れてしまいますが、綿棒にエタノールをつけてこするときれいになります。

接着後は、マスキングテープで固定します。

反対側はこんな感じ。

これから1ヶ月かけて漆をしっかり乾かしていきます。金継ぎは待つ時間のほうが圧倒的に長いですね。

器はほこりを避けるため、箱状のもの(室「むろ」といいます)に入れておきましょう。

漆は湿度60%〜80%、気温20℃前後の環境でよく乾きます。乾かす際は、濡れタオルなどを使って湿度を調節しましょう。わたしはホームセンターで売っているプラスチックのコンテナに濡れタオルを敷いて、室にしています。他にも、ダンボールを霧吹きで軽く湿らせて室にすることもできます。(依頼の多いお直し屋さんは、たくさん収納できる食器棚のような室をもっていらっしゃることもあります!)湿度計は100円ショップでも買えますよ。

麦漆が乾いたら、割れの周辺にできている小さい欠けを錆漆で埋めていきます。この工程はまた1ヶ月後に!

※竹串の先端を斜めにカットしたヘラ。けっこう使えます。

ちなみに、今回の器は明治に量産されていた「印判」です。

模様は、型紙の上から染料を刷り込んで写されたのだそう。

骨董市などで同じ柄をよく見かけるのは型紙があったからなんですね。

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